2022年11月9日、韓国の教育部は新たな教育課程から「性的少数者」という単語を無くすと発表した。学校生活に置いて性的少数者の生徒たちに何よりも大事なのは少数者の「見える化」と「日常化」だと言われる一方、教育部は学生と教師が経験している差別と嫌悪を放棄している。
翻訳:가리
翻訳の検討と修正:보꾸
原文:Miguel
原文の検討と修正:권태, 보꾸, 희중
韓国では小学校6年と中学校3年の教育が義務とされますが、対多数の学生たちが3年制の高等学校にも進学しています。たいてい人は成人になる前、12年間を学校という取り囲まれた社会で過ごします。ところで韓国の教育部は11月9日、この12年間の時間の中で「性的少数者」の存在を削除すると発表しました。
「若人たちのアイデンティティーに混乱を招くおそれがある」
教育部が発表した内容は「2022年改定教育課程」です。この改定案が最終的に確定されたら、2024年から小学校で、2025年からは中学・高等学校で授業と教科書の執筆に対する基準になります。改定案によると、社会・倫理・保健の教科目から「性的少数者」と「性平等」が削除され、「性別などで差別を受ける少数者」「性に関する偏見」「性差別の倫理的問題」のような言い回しに置き換えられます。
教育部はこの決定が意図的に性的少数者を外していると認めました。チャン・ホンジェ教育部係員は教育課程に性的少数者を明示すると「アイデンティティーを確立していく若人たちに混乱」を招き「第3の性を助長する」と言いました。以前、2015年に国家単位の性教育の標準案を作成する中で性的少数者を落とした前歴が既にあるのに、国はまた一度後戻りしようとしています。
学校の現場で性的少数者は見当たらない
現在の教育課程は2015年に改定されたものです。では、今の学校で性的少数者の存在は見つけられるのでしょうか。どうもそうではありません。ある研究で高校で使われる社会・文化教科書の5冊を分析した結果、社会的少数者に関する内容で性的少数者について語った教科書は一つもありませんでした(Lim, Park & Mo, 2022)。「共に生きていく民主市民」という教科書では性的少数者を軽く言及していますが、授業ではほぼ使われていないのが現状です。
青少年の性的少数者を支援する団体「ティンドン」と共同法律事務所「イチェ」が発表した2022年のレポートでも性的少数者人権教育の不十分さを指摘しています。教育関連の法律に性的少数者に関する内容は一切なく、国家人権政策基本計画(NAP)は2012年から関連内容を削除しました。また、講師の予備教育でも性的少数者に関する内容は確認されていません。ソウル・全北・忠南など一部の自治団体が学生人権条例を通して性的少数者である学生の権利保護を示しているだけです。
「社会上の合意が欠けている」という言い訳に隠れ込んで正確な単語を使おうとすらしていない政府の態度は、嫌悪を見過ごし、むしろ助長する結果を生み出すだけです。
国家人権委員会が2014年発表した「性的指向・性自認による差別実態調査」では現場の様子を伝えています。調査に応じた中学・高等学校講師100人の内79%は性的少数者に関する教育を一度も受けたことがないと答えました。また、講師全員は自分が勤めている学校に性的少数者差別禁止及び人権保護のための政策が一切ないと答えました。
教育課程は教師と学生を保護する装置になるべき
教育部の言う通り、青少年期は性的アイデンティティーを始め色んな「自分らしさ」を確立する時期です。だからこそみっしりと自分の可能性を探し、自分とは違う人と交わる方法を学ぶべきで、故に性的少数者が教育課程に示されるのは重要な案件です。性的少数者差別反対団体「ニジイロ行動」が教育の役割として「色んな社会的少数者と(…)お互いの多様性を尊重し平等に関係を結ぶように助けること」を挙げたのもこのためです。
国家人権委員会のレポートによると、性的少数者の生徒200人の内92%は、差別やイジメを恐れて性的アイデンティティーを隠したことがあると答えました。また、性的少数者であることで「差別やイジメをされても先生と相談しない」と答えた率が87.5%もありましたが、だいたい「自分を理解してくれそうにない」「自分を直そうとしそう」というのがその理由でした。
性的少数者の生徒たちが良い学生時代を送るためには彼らを支えられる講師が必要です。同時に、講師を裏付ける確かな教育課程と学校側の政策が求められます。「ティンドン」と「イチェ」の2022年の調査に応じたある講師は「教育課程にない性的少数者の人権教育を講師の計らいで行う訳にはいかない」と答えました。また、自律的に性的少数者の人権教育を行った講師たちが個人には耐えられない程の嫌悪攻撃に向き合わざるを得なかったこともありました。ある場合には、嫌悪団体が性的少数者に関する教育を行った学校に「同性愛を助長している」と苦情を入れ続いたり、学校の前でデモを起こしたりもしました。
講師を目指している性的少数者も似たような意見を出しています。講師を志望する3人の女性性的少数者の方はあるインタビューで「性的少数者の生徒たちと心理的に共感できる講師を目指しているが、教育課程に性的少数者が明示されていないのが気にかかる」と言いました(Shin, 2019)。一例として、色んな家族の形を教える時、教科書にはない同性カップルを教えようとしても、保守的な現場の雰囲気のせいで反対の声にぶち当たってなお講師の居場所まで失う危険もあるそうです。
「見える化と日常化は、権利を促進するための最善の方法」
11月29日韓国女性政策研究院が発表したレポートによると、中学生4000人を対象にアンケート調査を行った結果、約78%が性的少数者に関する教育が必要だと答えました。生徒達も既に社会が多様性に満ちていることを知っていて、このことについてもっと学べようとしています。これに対してある研究では教科書に性的少数者が登場しなし現実を取り上げながら、「存在しないことがむしろ大きな影響を及ぼす恐れがある」と言いました(Lim, Park & Mo, 2022)。社会的に重要な話題である性的少数者が教科書から落とされると、結果的に「社会に対して偏狭で歪んだ価値観」を教えることになる訳です。
勿論、教科書に「性的少数者」の一言が入るだけで全ての問題が魔法のように解決することには行かないでしょう。しかし、「社会上の合意が欠けている」という言い訳に隠れ込んで正確な単語を使おうとすらしていない政府の態度は、嫌悪を見過ごし、むしろ助長する結果を生み出すだけです。
韓国の外にはもう性的少数者の人権が学校の中に包容されたところが多いです。「性的少数者の見える化と日常化は、権利を認め促進するための最善の方法です。教室でジェンダーの話が挙がらないのは有り得ない」とおっしゃったあるスペイン人講師の言葉は韓国にも適用されるべき伝言でしょう。まだ教育部の改定案が確定されていない分、本稿の一同も新しい発表に目を注ぎ、情報を伝えさせて頂きます。
翻訳:가리
翻訳の検討と修正:보꾸
原文:Miguel
原文の検討と修正:권태, 보꾸, 희중
参考資料
Commentaires